PROJECT
1996年、
子どもの未来を考える場所から。
1996年、日本でインターネット接続サービスが始まって間もない頃、当時、東京大学名誉教授、国立小児病院名誉院長であった小児科医・小林登先生の発案により、Child Research Net(CRN)はスタートしました。
インターネットを通して、世界中の子どもに関わる研究者や教育者たちを結び、研究や知見を共有しながら、子どもにとってより良い社会を考えていく。そのための「子ども学研究所」です。
当時は、まだWebデザインという考え方すらほとんど確立されていない時代。CRNの立ち上げとともに、サイトのデザインから関わることになりました。
PHILOSOPHY
いかなる時も、
子ども第一で考える。
子どもをめぐる議論には、研究者、教育者、保護者、社会など、さまざまな立場や状況が関わります。議論が活発になるほど、それぞれの事情や考えが中心になり、本来そこにいるはずの子どもの存在が見えにくくなることもあります。
だから、サイトのどのページを開いても、いつも子どもがそこにいるようにしたいと考えました。
しかし当時のインターネット回線は非常に遅く、写真や画像を多く掲載することはできません。
そこで、各コーナーのアイコンそのものを、子どもたちの顔にしました。
CHARACTER
世界の子どもたちを、
CRNの真ん中に。
CRNが目指していたのは、国や地域を越えて、世界中の研究者や教育者をつなぐことです。
そこでキャラクターには、さまざまな人種の子どもたちを描きました。
子どもたちに名前はありません。名前から特定の国籍を想像させるのではなく、世界のどこにでもいる子どもたちとして見てもらいたいと考えたからです。
一方で、一人ひとりには性格を持たせました。さまざまなシチュエーションを描くときにも、その性格をもとに仕草や行動を考えることで、子どもたちが生き生きと動き出します。
子どもたちは、CRN本体のWebや出版物を中心に登場し、「子どもを真ん中に」という考えをいつも目に見える場所で支える存在になっていきました。
WEB
Webと一緒に、
育っていった。
1996年の立ち上げ当時、Web制作はまさに手探りでした。
回線速度や表示できる画像の量に制約があり、ブラウザやHTMLの表現力も現在とは大きく異なります。その後、CSSが使えるようになっても、まだレイアウトに利用できるほどではなく、Tableタグによるレイアウトが主流の時代が続きました。
CRNのサイトも、Webを取り巻く環境の変化に合わせて3度のリニューアルを行いました。
やがてCMSが登場し、サイトの運用や制作が専門のWeb制作会社へ移ったあとも、CRNとの関わりは続きました。
EXPANSION
一枚の葉から、
大きな木へ。
CRNの活動が広がるにつれ、デザインの仕事もWebの外へ広がっていきました。
毎年の活動をまとめたYear Bookでは、CRNの活動を一本の木に重ねました。
一つひとつの研究や活動を一枚の葉と考え、その積み重ねがいつか大きな木となり、子どもたちを社会のさまざまな災いから守ってくれたら。そんな思いから、表紙には毎年一枚ずつ葉を増やしていきました。
周年記念誌や出版物など、CRN本体の制作物では、子どもたちがその世界観を支える存在として登場します。一方、国内外の研究者や教育者が集まるシンポジウムなどでは、それぞれのテーマに合わせてメインビジュアルを制作しました。
媒体や表現が変わっても、その中心にあるのは「子ども第一」という考えです。活動の広がりに合わせて、それぞれにふさわしいカタチを考えていきました。
EPISODE
「子どもは未来。」
2000年、それまでの活動をまとめた冊子を制作した際、表紙に「子どもは未来。」という言葉を小さく添えました。
そのとき初めて、小林先生が「こどもは未来である」という本を執筆していたことを知りました。
同じところを見て、同じ言葉にたどり着いていたことに、互いに驚いたことを今でも覚えています。
CRNのために新しくつくった考えではなく、活動に関わり、子どもたちのことを考え続ける中で、自然と見つけた言葉でした。
EPILOGUE
受け継がれていくもの。
CRNを発案し、初代所長を務めた小林登先生は、2019年に逝去されました。
その後もCRNの活動は続き、2025年にその歩みを終えました。けれど、小林先生が大切にしていた「こどもは未来である」という理念は、CRNに関わった多くの研究者やスタッフの中に、今も受け継がれています。
1996年、インターネットという新しい場所から始まった、子どもの未来を考えるための活動。その歩みの一部は、現在もベネッセ教育総合研究所のWebサイトにアーカイブとして残されています。
CRNとは、立ち上げから約30年にわたる関わりになりました。
長い時間をご一緒できたことに感謝するとともに、小林登先生に、心より敬意を表します。